オールドコースデビューの１日
ティーチングプロ、植村啓太氏が体験したオールドコース
ティーチングプロとして活躍中の植村啓太氏。彼は2000年の全英オープンで今野康晴プロのキャディとしてオールドコースを体験。そして2002年には自身もプレイしている。ティーチングプロならではの視点で、オールドコースでの経験を語ってもらおう。
私がオールドコースと出会ったのはツアープロコーチ修業時代の２０００年。全英オープンにキャディとして訪れたときのことでした。そのときの印象は強烈でしたね。オールドコースはそれまで慣れ親しんできた日本やアメリカのコースとなにもかもが違いました。フェアウェイやグリーンの固さ、平らなところを見つけるのが難しいくらいのアンジュレーション、そして風の〝重さ〟。すべてが初めて経験するものでした。実際にコースを回ってみると、日本でやってきたアプローチがまったく通用しない。上げると固いグリーンに跳ね返されてしまう、跳ねる方向も予想がつかない、そして重い風にも流される…。「アタマが真っ白になる」というのはまさにこのことでしたね。
練習ラウンドを４、５ホール回るうちにこれはコースを熟知している地元キャディのアドバイスをまずは聞くことが得策だという事に気がつきました。彼らの指示は50ヤード、60ヤードのアプローチでも「転がせ」なんです。クラブも状況に応じて８番、７番、ときには５番を使う。そんな練習、日本でやっていないじゃないですか（笑）。練習ラウンドでは転がしの感覚を確かめるのに今野プロも必死でした。そしてもうひとつ印象に残っているのは想像を絶する深いバンカーです。グリーンを直接狙うどころかクラブを振ることさえ難しいバンカーも多くあり、バンカー内で打てるところに出すためにパターを使うことさえ想定しなくてはならなかったのは初めての経験でした。
再びオールドコースへ
全英オープンのオールドコースでの経験は日本に帰ってきてからも忘れることができませんでした。そして「いつかまたオールドコースを訪れてみたい」と思い続けていましたが、その願いが叶ったのは２年後のこと。今度は自分がクラブを握ってオールドコースに立ったのです。
そこで改めてこのコースの難しさを実感しました。何度もノートを取り知り尽くしたはずのオールドコースが今はどの方向に打っていけばいいのさえもわかわからない。全英オープンの時は観客スタンドがあり、それを目印にコース戦略を立てることもしばしばだったのにそのスタンドもない。まるで初めてオールドコースを訪れたような感覚に襲われました。
そんなオールドコースデビューでしたが、キャディのアドバイスは絶対だということを体が覚えていました。そして、彼の的確なアドバイスもあって、終わってみるとなんと８バーディーという結果でした。
オールドコースの魅力はいくつもあります。グリーンとの境がわからないようなフェアウェイ、深いバンカーや広大なダブルグリーン、17番のホテル越え、地元の人たちが眺めるなかでの18番のフィニッシュなど、そのどれもが「ゴルフの故郷でプレイしている」という感慨を与えてくれました。
これからプレイする人へのアドバイス
オールドコースでプレイする人に覚えておいてほしいこと。それは「ウェア」ですね。半袖、ベスト、セーター、レインウェア、これらをすべて持って行くこと（笑）。イギリスの天気は「１日のうちに四季がある」と例えられますが、これを侮ると大変な目に遭います。そして、先にお話ししたように転がす練習をしていくことでしょう。それだけ準備したらスタートホールで名前を呼ばれる、あの興奮を体験してみてください。ゴルフの聖地オールドコースは、ゴルフ本来の楽しみ方を教えてくれるところ。一生忘れられない経験がきっと待っています。
植村 啓太
Keita Uemura
1977年5月27日生まれ。
16歳からゴルフを始め、ツアープロを志し研修生やアメリカ留学を経験する。怪我によりツアープロの道を断念し、21歳からティーチング活動をはじめる。その後23歳の若さでツアープロと契約し、ツアープロコーチとしてデビュー。今日まで多くのプロゴルファーのコーチを担当する。
自身が主宰する「K's Island Golf Academy」（東京都渋谷区）でアマチュアゴルファーへのレッスンを精力的に行う一方、「ゴルフ＆ボディスタジオ GOLDIA」（大阪府大阪市）をプロデュース、2012年にはマレーシアにアカデミーをオープンし、海外進出を果たす。その後、「スポーツヒルズ大阪校」（大阪府大東市）を2014年にオープンする。
ゴルフの普及発展のため、ゴルフの魅力を伝えるとともに、ゴルフスクールの再生やプロデュース、インストラクターの育成にも力を注いでいる。
■K's Island Golf Academy
http://web.ks-island.com/
